犬の話

昔,本当に一時だけ家にいた犬の現在を聞いた.
12年前に突然家に犬が居て僕は大変びっくりした.犬は小さなシーズーで母が貰ってきたらしかった.染められたらしくピンクと青の僕から見たら奇妙な犬だった(後から聞いた話だが,ペットショップで染められていたようだ).僕は犬のテンションの高さとよだれ,またそこかしこでおしっこをしていたのが嫌で,"犬が居るのならもうリビングには行かない"と言ったらしい.そんなことがあって,結局1週間もたたないうち(たしか2,3日程度)に他の家に貰われていった.その後,その犬の話題が出ることはほとんど無くほとんど忘れかけていたのだが,そのもらい先から感謝の電話が来ていろいろと思い出した.
現在は一人暮らしのおじいちゃんと暮らしており,そのおじいちゃんの娘から”あの犬が来てからおじいちゃんの暮らしが変わった.犬を譲って貰えたことに大変感謝している”との連絡をいただいた.大変大事にされており,犬もそのおじいちゃんの言うことを良く聞き,お互いに良いパートナーとなっているそうだ.さすがにおじいちゃんも高齢で,たびたび入院をしているが,"犬が待っているから"といって早く治し退院しているらしい.今やおじいちゃんにとってその犬が全てと言っていいほど溺愛し,犬もそれに答えているようだ.
僕の家の犬の事例のように家族全員の同意無くペットを飼うのは,家族にとってもペットにとっても大変不幸なこと.一人でもいやがる人が居るのであればそもそも飼ってはいけないだろう.あのときは本当に突然やってきたのだが,そうする前によく話し合っておくべきだった.
結局,僕は自分が追い出した負い目があり,その犬にあまりいい思い出は無い.犬にとっても良い思い出では無いかもしれない.まさに人の都合で急に2度も生活をかえられたのだから.だが今回の電話でそのもらい手先で十分な幸せを得ているようでほっとした.本当に自分勝手だが罪悪感が幾ばくか軽くなった.